「アーティスト」やなわらばー

生きている限り、「やなわらばー」としての音楽活動は続く。
おばあちゃんになってもふたりで歌い続けていたい

Interview

石垣島出身の幼なじみのふたりが沖縄を離れて12年。音楽を通じて経験した出会いや喜びの全てが彼女たちの曲を作り、故郷への想いがハーモニーとなって聴く人の心へとやさしく届く 。結成10年を迎えた「やなわらばー」のふたりに音楽や沖縄に対する想い、夢実現までのプロセスについて伺いました。

「石垣島から出たい」。高校時代はお互いにそう思っていた

「音楽」という共通の夢を持って、大阪にある音楽専門学校への入学を決めたというやなわらばー。
幼なじみのふたりが同時に音楽の道を志すきっかけは何だったのだろうか。
:学生時代はずっとソフトボール一筋で練習に打ち込んでいたので、卒業後の進路を決めるときには、やりたいことが何も見つけられなかったんです。でも島から出たいという気持ちだけはあって…。『とりあえず東京に出てフリーターをします』って両親に言ったらもちろん猛反対(笑)。そのときに今まで自分が好きだったことって何かな?って考えて、すぐに出てきた答えが“歌”だったんです。小さい頃から歌うことが大好きで、歌ったときだけはみんなに褒められていました。これだ!と思って『音楽の専門学校に行きます』と言ったら、親はまた猛反対(笑)。最終的には、2年で結果が出なかったら島に帰ることを約束して、承諾してもらえました」。
梨生(以下・梨):私は、音楽の道を考えるまでは英語を活かした仕事に就きたいと思っていました。
その頃からバンドや音楽に興味はありましたが、自分がアーティストになる度胸はなくて。石垣島には音楽をやっている人が多いので、子供も大人も気軽に音楽を楽しめるような“場所”を作りたいと思ったのが、音楽の道へ進むきっかけでしたね。大学志望から切り替えて、音楽の専門学校で音響や照明などを学ぼうと思ったんです」。
歌い手と裏方、音楽の世界に進んだ動機は違ったが、同じ学校に進んだことがその後にやなわらばーを結成する契機となった。

沖縄を離れ、ホームシックになったことが曲作りに繋がった
島を出て自由に過ごしてみたい、音楽の世界でもっと自分の世界を広げたい、そんな希望を持って大阪へやってきたふたり。しかし、沖縄を離れてすぐにホームシックになったという。
:「コンビニに行ってもさんぴん茶も刺身も売っていない、沖縄音楽が聞こえてこない…全てが今までの生活と違いすぎて、萎縮してしまっていたんだと思います。梨生も同じ気持ちで、梨生の家に行っては内地の情報を交換して過ごしていました」。
ホームシックの寂しさを紛らわすかのように、ふたりは自然と曲を作りはじめた。
:「私のギターと優ちゃんの三線で3ヶ月くらいかけて1曲が出来上がりました。タイトルは“青い宝”。100%沖縄を想って作った曲で、そのときの湧き上がってきた感情をストレートに歌詞にして生まれたものでした」。
:「沖縄にいた頃は、沖縄の海が青いことを知らなかったんです。大阪から沖縄に帰る飛行機の窓から海を見て、こんなに青かったんだってびっくりしたのを覚えています。ずっと沖縄に居たら気づけなかったことですよね。沖縄を離れてみて初めて認識した故郷への想い、家族への想いをすべて歌に込めました」。

持ち歌1曲で出場した学内オーディションで見事優勝

学校で“青い宝”を歌うふたりの姿が先生の目に留まり、学内オーディションに出場するように薦められたことが次の転機となった。
:「私は裏方志望だったので、人前で歌うということを全く考えていませんでした。オーディションにはお手伝いの気持ちで出場したんですが、優勝してしまったんです。『やなわらばー』というユニット名も1日限りだと思って、ノリで決めました。まさか10年も『やなわらばー』として活動をするなんて思ってもいなかったですね(笑)」。
:「全く(笑)。オーディションでのパフォーマンスは酷いものでした。当時、自分たちで楽器のチューニングもできないレベルだったし、曲のテンポも遅くて(笑)。散々でしたね」
しかし、オーディションの優勝をきっかけに、先生が積極的にライブの予定を入れ始め、ふたりの気持ちとは逆行するかのように、やなわらばーとしての音楽活動がスタートしていった。
:「次の曲を作るモチベーションが上がらなかったのですが、デビューに向けてサポートしてくれた小池先生が本当に根気よく励ましてくれました。先生がいなかったら今のやなわらばーはないと思います」。
周囲の人に支えられながら音楽の道へさらに歩みを進めたふたり。ライブを重ねる毎に音楽に対する意識も少しずつ変化していったという。
:「それまで歌うことは自己満足でしかなかったんですが、自分たちの曲を聞いて涙を流してくれる人、ありがとうと声をかけてくれる人に出会って、自己満足ではなく、全身全霊で音楽に挑まなければいけないと思い始めました。学生ではなくプロ。そんな意識が芽生えたことで、やなわらばーとして音楽活動を続けていく覚悟ができていったと思います」。

音楽に支えられてきて今の自分があるように、
私たちの曲も、誰かのそんな存在でありたい-梨生
ライブに足を運んでくださるファンの方に喜んでもらえるには何をすればいいのか。
そのことを常に考えていますね -優

やなわらばーに無償の愛を注いでくれるたくさんの人たち。
音楽を通じて人との繋がりを感じられることが、生きがいでもある。

一歩踏み出すのは勇気がいること。何もしないでいるのはもったいない

結成10年。ライブアーティストとしてこれまで以上に活動の幅を広げたいと話すふたりに心に残っているライブについて聞いてみた。
:「一番印象に残っているのが上京したての頃のライブ。自分たちの曲を聞いて号泣していた女の子がライブ後のサイン会で、話しかけてくれたことがありました。その子は沖縄から出てきたばかりで、友達も居なくて寂しくて沖縄に帰ろうと思っていたようなんですが、私たちの歌を聴いて『もう一度頑張ります!』と言ってくれたんです。その後、またライブに足を運んでくれて、しかもそのときは友達も一緒で。笑顔で『楽しんでいます!』って答えてくれたときは、私たちのほうが励まされて、元気をもらえました。やなわらばーはお客さんと一緒に成長していくアーティスト。10年経ってもそのスタイルは変わっていませんね。」

ふたりの歌が聴く人のエネルギーとなり、聴く人の姿もまた彼女たちのエネルギーとなって、新たな音楽が生まれていく。その循環が“ライブアーティストでいたい”と彼女たちが願う理由ではないだろうか。アーティストとして進化を続けているふたりに、夢を追いかける高校生に向けたメッセージを聞いた。

:「まずは行動すること、そして、人との出会いをひとつひとつ大切にすることが夢実現へのプロセス。自分を信じて進んでほしいですね。」
:「夢は願っている段階だと輝いている部分しか見えないけど、実現する過程で辛いこともたくさん経験します。でもそんな辛さを受け入れてはじめて夢に近づくことができる。恐れずに行動して、チャンスがあるならば沖縄を離れてみることも大きな転機になると思います。内地に出て沖縄が恋しくなったら、ぜひ私たちの音楽で癒されてくださいね(笑)。一緒に歩んでいきましょう!」

梨生の愛用中のギター。「今まで嬉しいことも辛いこともギターと共に過ごしてきたと思います」

03年に発売された“変わらぬ「青」”のCDはなんと手作り。「CD150枚分の紅芋スタンプを自分たちで作りました(笑)」

CDと一緒にプレゼントした星の砂が入ったキーホルダー。“ファンに喜んでもらいたい”そんな彼女たちの想いが感じられる

ファンからプレゼント・パイナップル柄の手作りワンピース。「私のイメージに合わせて作ってくださいました。宝物です! 梨生」

優の三線はやなわらばーの3番目の歌い手。“コダマ”のキーホルダーはお守りのような存在なのだとか

高校時代のハンドボール部顧問・荷川取考吉先生からの手紙。「先生との文通は約10年続いているんですよ 優」

Profile

やなわらばー
ボーカル&三振担当の石垣優(左)とボーカル&ギター担当の東里梨生(右)による石垣島出身の幼なじみユニット。
2003年のメジャーデビュー。ファーストアルバムはオリコンウィークリーチャート6位を記録。
石垣島で育った2人から紡ぎ出される普遍的な歌詞と透き通るような歌声は、聴く人にゆっくりと染み入り心を振るわせる。

information

Discography
03年 大阪キャットミュージックカレッジを卒業と同時に上京。同年、「変わらぬ青」でメジャーデビュー。
04年 「ありの歌」(テレビ朝日系アニメ・クレヨンしんちゃんエンディングテーマ)をリリース。
05年 渡米。2週間に渡り、西海岸で音楽活動を行い、海外のオーディエンスからも熱い支持を得る。
06年 プロデューサーにRYOJI(ケツメイシ)を迎えた「唄の島」をリリース。
07年 ファーストアルバム「歌ぐすい」はオリコンチャート6位を記録。全国各地でワンマンツアーを行う。
08年 シングル「サクラ」、「ぷれぜんと」、カバーアルバム「凪歌」
09年 シングル「たからもの」
10年 2ndアルバム「ゆくい歌」をリリース。現在も全国各地のイベントやライブハウスを中心に活動し、時代に左右されない普遍的な美しいメロディーを観客に届け続けている。

やなわらばーオフィシャルサイト_http://www.ya-na.net/

GO TO SCHOOL 2011.7

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