ボートレーサー 知念 伶奈/長嶺 真李愛

難関を突破した読谷出身のボートレーサー。
未経験から目指したプロアスリートの道を歩むおふたりに、ボートレースについてお話をうかがった。

Interview

沖縄ではあまり馴染みのない、ボートレースの世界に飛び込んだ長嶺さんと知念さん。とても難しい養成校の入所試験も、1年間にわたる厳しい訓練もクリアし、2026年5月に見事プロデビューを果たした。ボートレーサーになるまでのことや、ボートレースの魅力、今後の目標などをお聞きした。

ボートレーサーを目指したきっかけ

― ボートレース場のない沖縄出身のおふたりが、どうしてボートレーサーを目指そうと思ったのか教えてください
長嶺:高校生のときに陸上競技をしていて、全国を目指してがんばっていました。でも、高2の時にコロナ禍で試合もなくなり、力を発揮する場所を奪われました。大学に陸上で推薦入学も目指すつもりでしたが、気持ちがきつくて走れず、陸上はやめてしまいました。その後入学した大学では株や英語などを学んでいたんですが、それほど打ち込めず、友人に競馬やボートレースに誘われたときも最初は聞き流していました。後に「ボートレーサーってどうやってなるんだろう?」と気になるようになり調べると、福岡にあるボートレーサー養成所(以下養成所)を出ることが必要だと知りました。そのとき私は21歳前でしたが、年齢的にもボートが未経験でも始められるスポーツだと知り、ボートレースに挑戦しようと思いました。
知念:私の出身校の普天間高校は、沖縄県内でも有名な進学校なので、同級生は進学する人が多く、私も高校卒業後は医療系の専門学校に行こうと思い、放射線技師や理学療法士の学校を調べていました。そんななか高校3年生のときに福岡の学校のオープンキャンパスに行ったのですが、観光中に母が見つけたボートレース場に寄ってみたら、走っているボートレーサーがとてもカッコよくて。それで「私もボートレーサーになりたい!」と思いました。

ボートレースへの家族の反応

― ボートレースは、ケガなど危険が伴うイメージがありますが、ご家族の反応はいかがでしたか?
知念:テニスをしていた経験もありスポーツが好きなことも知っていたので、「やりたいならやってみたら?」と家族も応援してくれました。養成所には13期で入所しましたが、訓練中にケガをして自宅療養になってしまったときは家族にも心配されましたが、復帰して138期に編入したことで長嶺さんと同期になりました。
長嶺:ボートレーサーになると決めたときは、すでに大学で県外にいたので「ボートレーサーを目指したい」と沖縄の家族に連絡しました。母は最初「ボート=ハーリー」だと思っていたみたいですが(笑)、スポーツが好きな父は「いい道を見つけたなぁ」と言ってくれました。母は危ないと心配していましたが「まーちゃんが決めたなら」と、反対はなくすんなりと決めることができました。

養成所に入るために必要なこと

― 難しい養成所の試験に向けて対策したことを教えてください。
長嶺:養成所に入所するためには、試験に合格するほかに船舶免許が必要なので、入所前に2級小型船舶免許を取得しました。スポーツ推薦枠の実績は3年以内のものじゃないといけないので、高校での陸上の実績は使えず、それまでの受験は全てスポーツ推薦だったので学科は苦手で苦労しました。学科試験は、有名高校の過去問などを毎日12時間くらい勉強し、勉強や家事の合間にはボートレースの動画ばかり見ていました。
知念:ボートレーサーが走ってる姿を見て「私もなろう!」と決めたので、最初は養成所に入所しないといけないことも知りませんでした。調べていくうちに試験はとても厳しいと知りましたが、試験対策に何をしていいかわかりませんでした。父が走るのが好きでマラソンをしていたので、毎日一緒に5キロ走って体力試験に備えました。もともと釣りが好きで、高校の時に2級小型船舶免許を取っていたので、それは役に立ちました。

ボートレーサーになるためには、福岡県にある全寮制のボートレーサー養成校で1年間訓練し、国家試験(筆記)に合格することが必要だ。入所時の学科試験問題は、高校入試程度の国語・数学・理科・社会の4教科。学科試験のほか、体力試験・適性試験・人物試験など7つの試験に合格した者だけが入所できる。

厳しい養成所での生活について

― 養成所は選手の体調や活動内容など、しっかり管理されているそうですが、どのような1日を送っていましたか?
知念:養成所の1日の流れは分単位で決まっています。起床は朝6時。ブザーが鳴り音楽が流れている3分以内に布団を畳み、着替えないといけません。女子はダンベル・男子は寒風摩擦のタオルを持って人員確認をします。掃除のあと短い自由時間があり、朝食は7時から15分間。8時から課業と呼ばれるボートレーサーに必要な講義や実習があります。昼食は12時からで、13時~15時半まで課業。15時半~16時までボートの整備をし、そのあと機材の整理や燃料の準備片付けなどを行い、夕食まで自由時間。17時から夕食で、17時半に売店が開き、1日で食べ切れる量のおやつを買うことができます。そして19時まで自習、19時~21時までは自由時間で、お風呂や洗濯、テレビを見たりおやつタイムを楽しむこともできます。21時から15分掃除、就寝準備をして21時半に点呼を取って22時に就寝と、時間を意識して動くことが必要です。
長嶺:養成所の同期には、スポーツを極めた方や大学院卒などエリートが多かったです。全国各地で部活のキャプテンをしていた方もいて、皆さんキビキビしていました。起きてから寝るまでほぼずっとカメラで見られていて、一人の時間はトイレのみ。お風呂もみんな一緒で、最初は緊張して周りと必要以上に話せずにいました。でも、スポーツは横つながりが大切なので、厳しい訓練や試験で残った年下の同期とも仲良くなっていきました。真夏の訓練では、暑い中ヘルメットや救命胴衣を着て、暑さで頭も回らなかったり、真冬には寒さをこらえたりと大変でしたが、ボートレーサーになるには必ず通る道だし、養成所の試験に落ちるとその後一生ボートレーサーにはなれないルールなので、集中して訓練に取り組みました。

ボートレーサー養成所に入所し、ボートレースに必要なあらゆることを1年間学んでいく。ボートの操縦やエンジン・プロペラ整備の技術、モーターボート競走法をはじめとする様々な知識、そして礼儀や節度などを、全寮制の集中できる環境で身につける。毎期約50名が試験に合格し養成所に入所するが、1年間の訓練を修了してボートレーサーとしてデビューするのは半数程度になる。

養成所での楽しい思い出

長嶺:厳しい養成所の生活にも楽しみはありました。体重管理で食事制限もあったけれど、誰かの誕生日には女子だけで甘いものを食べたりして、みんなの幸せそうな顔を見れて嬉しかったです。同期は年下が多いので、妹のように可愛いがっていました。
知念:コロナの影響でしばらく外出は禁止されていましたが、137期からは外出日もできて、3ヶ月に1回、半日くらい出かけられるようになりました。長嶺さんたちと一緒にご飯に行ったのも楽しい思い出です。

目標にしている憧れの選手

― ボートレーサーで目標としている選手、憧れている選手を教えてください。
長嶺:「渡邉優美選手」と「深川麻奈美選手」のおふたりです。養成所に入る前から、YouTubeでボートレースの映像を見ていて憧れていました。おふたりに共通しているのは、レースが上手いのはもちろん、周りに応援される選手だと感じるからです。深川選手は直接お会いしたことがありますが、とても可愛くて素敵な方でした。
知念:初めてのボートレース場でカッコいいと思った選手で、私がボートレーサーになるきっかけとなった「米丸乃絵選手」です。訓練生の時に養成所の練習でお見かけしたことはありますが、上の階級の方なので自分から話しかけることはできませんでした。

プロデビュー戦について

知念:沖縄出身者は福岡支部に所属する人が多いですが、私は長崎と佐賀で迷って、佐賀支部に所属するこにしました。デビュー戦は2026年5月に開催されたボートレースからつ「BOATRACE振興会会長賞GW唐津特選」。練習で走りなれている佐賀のレース場だったので、あまり緊張することはなく、練習の延長的に楽しみながら挑むことができました。
長嶺:私は福岡支部に所属していて、デビュー戦は2026年5月のボートレース若松開催「トータルプロデュースカップ」。めちゃめちゃ緊張するタイプなんですが、ミスをせず無事故で走り切るよう胸を張ってがんばりました。

厳しい制約のあるボートレース

― ボートレース場は全国各地にありますが、選手が希望して各レースに参加するのでしょうか?
知念:ボートレースへの出場は、選手が応募するのではなく「一般財団法人日本モーターボート競走会」のあっせん課が、選手の成績やスケジュール、ランクを見て斡旋します。選手のランクは「B2・B1・A2・A1」の4段階で、階級によって年間の出走回数や月の斡旋回数が異なり、A級の選手ほど多く斡旋されます。レース期間中は不正を防ぐため、スマホやBluetoothなどの電子機器等は宿舎への持ち込み禁止。レースは男女混合が標準ですが、中には女子だけで行うレースもあり人気があります。レースに使用するボートは抽選で、出場選手は全員同じ部屋に集まって、ガラガラと抽選して平等に決めます。ボートや部品のメンテナンスも自分で行います。「ゲージ」と呼ばれる部品をプロペラに合わせて形を整えないといけないので、大変ですが地道にがんばっています。
長嶺:不正防止の観点から言うと、レース場は宿舎も含め、外部と接触ができないようになっています。ボートの不正がないように、他の人はボートに触れてはいけないことになっていて、レースやレースに関するイベント等以外でボートレース場に入るのも禁止されています。また抽選で割り当てられたボートの整備は自分で行います。モーターやプロペラの調整など基本的な整備は養成所で教わりますが、早く走るための応用は師匠やレース仲間から教わって技術を高めます。ゲージの価格は3万円くらいとお金はかかりますが、レースに使用するものを揃えて整備することが大切です。出場するにあたり体重制限があり、女子の体重の下限は47kgで、オーバー気味の時はレース前に調整をすることもあります。

ボートレースの魅力と目標

― 大変なこと、厳しことがあっても続けたいと思う、ボートレースの魅力と今後の目標は?
長嶺:学生時代の同級生は社会人で、毎日仕事に行きたくないという話をよく聞きますが、ボートレーサーは時間もお金も得られる、自分に合ったいい仕事だと思います。今後はフライングもなく完全無事故でB1に上がり、そしてA級へと上がっていきたいです。ボートレーサーは全国で1600人くらいいて、その中で女子は約230人います。デビューして良い成績を出さないと生活することができず、勝たないと続けることができません。勝率が高くても、事故率が高いと上に上がることができないので、安定した旋回をしながらおもしろいレースをしていきたいです。
知念:佐賀の方たちは人柄もとても良く、喋るのが好きな私はレースで知り合った全国のいろんな方と交流できることが楽しいところです。ボートレースは時計が0になったらスタートで、1秒以内にスタートラインを通過しなくてはいけないのですが、それを守れなかったので今は30日休みのフライング休み中です。スタートから+0.05以上のフライングの場合には「非常識なフライング」として35日の休みになることもあります。これからはフライングすることも事故もなく、A1に上がれるように頑張りつつ、自分も周り
も楽しめるようなレースがしたいです。

高校生の皆さんへメッセージ

― 本誌を読んでいる進路を考え中の高校生へ向けて、メッセージをお願いします。
長嶺:私たちは身長が高いほうですが、沖縄出身のボートレーサーは小柄で運動神経の良い人が多いです。また学科試験も体力試験もあるので、若いときにチャレンジするのが有利だと思います。養成所の応募資格は公式サイトにある情報をチェックしてください。今は矯正視力もOKで、視力で諦めていた方にはチャンスです。ボートレーサーになるには、学力・体力のほかに時間を守ることも大切です。養成所でゆっくり動いていたら置いていかれるので、時間を守り5分前行動を心がけてください。
知念:ボートレースを見てかっこいいと感じボートレーサーになった私は、少しでもボートレースに興味があれば、まずレースを見た方がいいと思います。養成所に入所する最終試験で「ウチナータイムは大丈夫?」と聞かれ「大丈夫です!」と答えたけれど、マイペースなのでみんなが動いているのに気がつかず周りに人がいないことがありました。時間を守ることは大切。進学先で迷っていることがあるなら、実際に大学などを見に行くのをオススメします。気になったことは、なんでもチャレンジするといいと思います!

information

養成所142期2026年7月1日より募集開始

応募に当たっては下記の条件を全て満たすこと。
■年齢:15歳以上30歳未満
■学歴:入所日において中学校を卒業していること
■身長:175cm以下
■体重:男子…49kg以上57kg以下、
女子…44kg以上52kg以下
■視力:両眼とも裸眼視力又は矯正視力0.5以上で強度の色弱でないこと
聴力その他の健康状態:選手養成訓練を行うのに支障のない者
■その他:拘禁刑以上の刑に処せられた者及びモーターボート競走法に違反して罰金以上の刑に処せられた者、選手養成訓練中に成績不良又は素行不良により養成を取りやめられた者 、本人及びその家族が反社会的勢力との関係が疑われる等モーターボート競走の公正を害するおそれがあると認められるに足りる相当の理由のある者のいずれにも該当しない者
 
公式ホームページ
https://info-boatrace.jp/rb/

Profile

Profile
知念 伶奈(左)
Reina Chinen
2005年7月1日 沖縄県立普天間高校出身。養成所第138期生・佐賀支部・B2級。
デビュー戦:5/1~5/6ボートレースからつ開催「BOATRACE振興会会長賞GW唐津特選」
長嶺 真李愛(右)
Maria Nagamine
2002年6月27日生 沖縄県立中部商業高校出身。養成所第138期生・福岡支部・B2級。
デビュー戦:5/9~5/12ボートレース若松開催「トータルプロデュースカップ」

GO TO SCHOOL!! 2026.07

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