「リペアマン/ギター製作家 D.N.S -Draw a New Sound- 代表」村吉涼秀

ギターには正解がない
あるとすれば、その人の好み
僕の仕事は、その人好みの音を引き出す事
夢は叶ってからが本当のスタート
夢に届けば、またすぐ次の夢が生まれる
その繰り返しで
夢は一生叶わなくても、いつまでも夢を追い続けて生きたい
僕は「頑張る」という感覚を知らない
好きな事をやるためだから何でもできる
“頑張っている”って思う時は
好きじゃない事に取り組んでいる時

Interview

現在、東京都田端駅徒歩1分の好立地でギタークラフト・リペア工房D.N.S -Draw a New Sound-を運営する村吉涼秀さん。
幼い頃から好きな事を仕事にしたいと思い、高校時代に見つけたギタークラフト・リペアマン という天職に出会うが、沖縄ではまだまだ認知度の低い職業だったので、それを職業にして本当に大丈夫なのか? と、周囲から反対された時期もあった。しかし、好きな事をするためなら「努力」や「頑張る」という感覚を持たずに何でも楽しく取り組めたと語る村吉さん。これまでどんな道のりを歩んできたのかインタビューした。

初めてギターを手にした時の素朴な疑問
美術の授業で制作したギターが、クラフト・リペアマンになるきっかけに

— 現在の職業を教えてください
村吉 ギター、ベースのリペア(修理)やクラフト(製作)、オーダーメイドの楽器販売をしています。卒業後すぐに工房を開き、今年で3年目になります。お陰様でお客様は増えているのですがリペアの依頼が忙しく、製作の方に取り組めないので今後はもっとオリジナルギター製作にも力を入れていきたいですね。また、ご相談いただければ、エフェクターの調整も行っています。

— エフェクターとは何ですか?
村吉 エフェクターとは、ギターと繋いで音響効果を与える機器の事です。音をアンプに送る途中で、電気的に音を改変する機械なのですが、内部の部品を変えるなど、少し手を加えるだけで音質が変わります。購入したまま使用するよりも自分好みに音が調整できるので、音の変化を楽しみたいという方はぜひご相談いただければと思います。

— どんな方がお店に来られますか?
村吉 高校生からご年配、プロの方まで、年齢・経験を問わず多くの方に足を運んでもらっています。特に大学生は、縦や横のつながりが強いですね。フットワークが軽くコミュニティーも多いのか、口コミの大きさを感じます。また、ショップの地下には知人のレコーディングスタジオがあるため、急な調整が必要になったり、調子が悪いとギターを見せに来てくださる事もあります。そういう意味では立地面でも恵まれていますね。
たラップとかレゲエにはあまり興味がありませんでした。僕が感銘を受けたアーティストは、X JAPANです。中学生の時に、たまたまガソリンスタンドを通りかかった時に流れていたのがX JAPANの「Forever Love」で、ものすごくいいメロディーだなと思い強く惹かれました。中でもHIDEが好きで、それもギターを始めたきっかけの一つと言えます。

— 高校時代からギタープレイヤーとして活躍していたんですか?
村吉 いいえ、軽音楽部の友人と演奏するくらいで、高校時代は自転車部でした。同級生にはリオオリンピックにも出場した選手がいる強豪校だったんですが、当時は漠然と大学に進学するものだと思っていたので、競技人口の少ない自転車部で実績を残せば進学時に有利になるんじゃないか!? と思って入部したんです。でもリペアマンになるという目標を見つけた高校2年生の時に、即、自転車部を退部しました。

— それはどうしてですか?
村吉 ギタークラフト・リペアの学校に通うお金を貯めるためです。僕は3人兄弟の真ん中で、実家はそれほど裕福な家庭ではありませんでした。そんな事もあり、両親にリペアマンになりたいと相談したところ、自分でお金を貯めて学校に入るならいいと言われました。だから部活を辞めてアルバイトをし、貯金を始めました。

— 部活を辞める事に未練はありませんでしたか?
村吉 やりたい事が見つかり、そのために何をしなければいけないか、それが明確になった事が嬉しかったし、俄然やる気が湧いてきたので、未練はありませんでしたね。

— お金を貯めるのに、どのくらいかかりましたか?
村吉 4年です。リペアマンになりたいと決意し、すぐにインターネットで学校を調べました。
2年間で300万円の学費がかかると知り驚きましたが、学校に通う間の生活費も必要だと考え、それよりも多くの貯金額を目標にして働きました。

— どんな仕事をしてお金を貯めましたか?
村吉 高校時代は飲食店でアルバイトをして、卒業後は販売業に就職しました。社員になればボーナスも出るし給料が増えると思い就職したのですが、1年ほど働き計算してみると、手取り額はそれほど多くない事に気づき、アルバイトを掛け持ちする働き方に変えました。それから4年間貯金をして22才の時にESPギタークラフト・アカデミーに入学する事ができました。

ついに上京。進学の決め手とESPギタークラフト・アカデミーでの学校生活

— ESPギタークラフト・アカデミーに進学した決め手は何でしたか?
村吉 僕は学歴が欲しかったわけじゃないので、例え専門学校卒業の学歴が得られなくても、ギタークラフトとリペアを学び自分のお店が持てればいいと思っていました。ESPを選んだのは、沖縄の説明会にも来ていたので信頼できた事と、ギター制作の本数制限がなかった点です。他校では年間制作できるギターの本数が決められているのですが、ESPでは無制限でした(※1)。ギター制作では接着や塗装をするため、その間に同時進行で別の作品を作れるのが魅力的だなと思いました。学生時代、多い時には3本のギターを同時制作していた事もありましたね。
※1:村吉さん在学当時

— 在学中は何本ギターを制作しましたか?
村吉 3年間で30本弱は作りました。自分で学費を出していたので、1分1秒でも無駄にしたくないと思っていたんです。恵まれた素晴らしい環境の中で、好きなだけギターが作れる。こんなに幸せな事はないと思っていましたし、先生よりも上手くなりたい、越えてやる! という気持ちが常にあり、自信もありました。

— どんな学校生活でしたか?
村吉 同級生には高校を出たばかりの年下の子たちもいれば、一度社会に出てから入学する人もいましたが、そこまで強い気持ちがあったわけじゃないのに入学していた人や、親の援助に甘えているように見える人もいました。なので、自分と同じ考えを持った人は居ないのか? と不安でした。もちろん、全員がそういう気持ちだったわけではなく、中には自分と同じで音楽が好きだったり、クラフトやリペアに興味を持ち真剣に取り組んでいる仲間もいたので、そうしたクラスメイトとは同じ志を持つ者同士、ライブに行ったり情報交換をしたりという時間が過ごせてとても楽しかったです。
そんな中、唯一「この人には勝てないかもな」と思った人がいます。その人は3年生の時に、再入学という形で同級生になったんですが、全てにおいて自分を超えようとしている、唯一できた親友でありライバルと言える人です。実はこのお店も、彼の意思を引き継ぐ形でオープンしました。

— といいますと?
村吉 彼は早くからギタークラフトやリペアのお店を出すと決めて動いていました。僕も卒業後はお店を出すと決めていたんですが、彼ほど具体的に考えたり、積極的に動けていなくて…。だから彼の考えや話を聞いて、ものすごく勉強になりました。
けれど彼は、家庭の事情で他の仕事に就く事になってしまい、それならば僕が彼の夢を形にしたいと申し出て、お店の名前やロゴをそのままいただきました。でも、いずれは彼を雇って一緒に働きたいので、その日が来る事を願いお店を続けています。

ギタークラフト・リペアマンとして独立。世界進出を計画中

— ギタークラフト・リペアの仕事では、普段どんな事を心がけていますか?
村吉 つい数年前まで自分でもバンドを組んでいたし、ライブは今でもよく観に行くので、プレイヤー目線の接客を心がけています。必ず対面でお客様の反応を見ながらチューニングするのもその1つで、音を出した時のお客様の表情を見れば、どう感じたかすぐに解ります。また、直で細かな指示ももらえるんで、お客様好みの音を出せるんですね。そういうやり方も、バンド仲間からアドバイスをもらい思いつきました。僕の好みを押し付けるんじゃなくて、お客様の好みの音を知りたいし、出したいですよね。今はリペアマン一本ですが、自分でもバンドをしていた頃は、バンドが売れてリペアの仕事も増えればいいと考えていました。だっていないじゃないですか? プロのバンドマンであり、プロのリペアマンでもあるって。けれど両立は難しく、今はリペアマンをメインに、プレイヤー経験を活かしながらバックアップするこの仕事に誇りを感じています。店名の“D.N.S -Draw a New Sound- ”の意味でもあるのですが、プレイヤー本人でもまだ聞いた事のない、新しい音を引き出すお手伝いがしたいですね。

ESPギタークラフト・アカデミー在学中、優秀な生徒としてNHKのTV番組に出演したり、音楽雑誌のインタビューを受けたりと、さまざまなメディアに取り上げられた

— 今後の目標は?
村吉 お店を世界規模にする。世界進出です。今の国内生産は、安くていいものが出すぎています。だから良いメーカーでも安くしないと売れない。本来適正である価格で売れない。けれど僕は自分の価値を下げたくないので、同じ土俵に飛び込む必要はないと考えています。それもあり、国内にこだわるのはやめて、もっと世界に目を向けてみようと動き始めています。その第一歩として、来年1月下旬にアメリカで開催される世界最大規模の楽器ショー“NAMM Show(ナムショー)”に行きます。世界中の楽器関係者が訪れる場所なので、現場を自分の目で見て、日本との違いや世界が求めているものを知りたいです。すでにチケットは手配済で、同業の友人と行きます。それもあり、学生時代あんなに苦手だった英語を、今は自ら学んでいるんですが、本当に自分は好きな事をする為なら何でもやれるなと思いますね。

— 世界進出のほかにも夢はありますか?
村吉 夢は親友と一緒に働く事、世界の人を相手に仕事をする事もそうですが、夢は叶った後にまた生まれるものだから、一生夢は叶わないものだと思います。今の夢に届けば、また次の夢が見つかる。夢が叶ってしまったらそれはやめる時だと思うので、いつまでも夢を追い続けたいです。

何事もやってみなければわからない!
自分がどうしたいのか、その為に何をすべきかを考えてほしい

— 進学を考える高校生にメッセージをお願いします
村吉 世間一般的に考えられる事、みんなが通る道以外は「変」と言われる世の中なんて気にしなければいいと思います。やってみなきゃわからないですから、自分がやりたいと思う事があるなら、素直にそれが正しい道だと信じてください。周りから言われた事を真に受けて、自分で自分を否定する必要はありません。ただ、これからはもう、すべて自己責任の上で行動しなければなりません。僕は親から学費を出してもらえなかったので、自分で学費と生活費を稼いで進学しましたが、もし親に学費を出してもらっていたら、今の自分はないと思います。当時言われた、「そんな仕事で就職できるの?」「リペアマンになって成功してる人なんている?」といった周囲からの厳しい言葉があったから踏ん張れたなと感じます。
例えば進路相談だって、一人の先生だけじゃなくて、いろんな先生、たくさんの人にしてみればいいと思います。音楽に詳しい評判の先生が県内にいるなら、知り合いじゃなくても足を運んで相談してみればいい。大事なのは、自分がどうしたいか、そのために何をすべきかを考える事です。

— 村吉さんが思う東京とは?
村吉 東京は慣れるまでに時間がかかります。東京の人ってよく冷たいと言われますが、冷たいんじゃなくて、他人に構っている暇がないんだと思います。他人を助ける努力をするなら自分が上にいく努力をする。そういう人が多い気がします。だから悪い人っていうわけじゃないんですよね。でも、東京には本当に何でもあります。それに東京は、チャンスが多いところです。音楽の世界で言うと、一つ成功すれば必ず次に繋がるところです。けれどその分、一度の失敗も大きいです。良い噂が広まるのも早ければ、悪い噂が広がってしまうのもあっという間。人口や人脈が多くてチャンスは溢れているけれど、地道に着実に取り組む姿勢が肝要だと思っています。
沖縄の高校生のみなさん、変人扱いされる事を恐れずに、自分の好きな事、やりたい事にチャレンジしましょう!

GO TO SCHOOL!! 2016 Life 夢インタビュー 村吉 涼秀( D.N.S -Draw a New Sound)

Profile

リペアマン/ギター製作家 
D.N.S -Draw a New Sound- 代表 
「村吉 涼秀 Ryohide Murayoshi」
沖縄県北中城村出身、1988年12月14日生まれの27歳。
高校の美術の授業でギター制作した事を機に、リペアマンを志す事に。
アルバイト・就職を経て学費と当面の生活費を貯めてから上京。
ESPギタークラフト・アカデミー卒業後、24歳にしてD.N.S -Draw a New Sound-の代表となりギタークラフト・リペア工房を立ち上げた。

information

ギターリペア工房
DNS – Draw a New Sound –
〒114-0014
東京都北区田端1-21-3 エーデルワイス101
◎ギター、ベースのリペア(修理)業務
◎ギター、ベース製作
◎オーダーメイド楽器の販売
◎エフェクター製作

WEBSITE
http://dns-guitar.jp/
MAIL
info@dns-guitar.jp
BLOG
http://dns-guitar.jp/blog/

GO TO SCHOOL 2016.10

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