「絵で食べて行く」ために取得した以外な資格
大学在学中NYへ渡り本格的にアートの世界に進む。
「日常の両価的感情(アンビバレント)」をテーマに作品を作り続ける。
アディダスのイベントロゴやHYのツアーグッズのビジュアルを担当するなど、画家の世界へ羽ばたく。
マーケティングを専攻し、海外経験から得た「アートで食べていく」という生き方を聞いてみた。
お仕事の依頼はメールやSNSで受けているので、1日の始まりはそのチェックから始まる。いただいた問い合わせには極力早くお返事するように心掛けている。
お仕事をいただいたクライアントとの打ち合わせは、描いた作品の使用用途やどういったターゲットに向けた物にするのかを話し合う大事な時間。
実現だけを追い求めて諦めずに手にした画家という職業
物心ついた頃から絵を描いていたHAYATO MACHIDAは「絵を描くこと」を仕事にしたいと考えるようになった。芸大へ進学を目指すも「絵で食べていけるわけがない」と家族の同意を得られず悶々とした日々。芸大卒業生へヒアリングしても、仕事として自立できている人が見当らず、マーケーティングを学べる大学へ進路を変えて、空いた時間を利用して絵を描き続けた。「日本で絵を描いて食べていくことは無理なのか?」その答えを見つけるために渡米を決意する。
アートの聖地といえるNYに滞在し、語学や絵画の基礎を学びながらギャラリーや美術館へ足繁く通う。そこで現地のアーティストに直接会ってリアルな声を集めた。そこで驚いたのが、活躍するアーティストたちがシビアにお金について語り合っていたこと。「アートでは食べていけない」「お金の話をするのはタブー」とされる空気が日本には根強くあり、価値観のかけ離れたNYの「商業アート」に強く惹かれていく。留学前は画家になることに戸惑いがあったが、NYの経験を経てアートで食べていくために必要なのは「お金について学ぶこと」にたどり着く。そこで在学中に簿記3級の資格を取得した。
作品を公開していたSNSを通じて、スポーツブランド「アディダス」から制作依頼が来て「絵で食べていく」人生の一歩を踏み出す。就職の岐路に立つも、うまく将来のイメージが掴めない。自分の絵をプロデュースして個展を開いたことで手応えを感じ、実家から独立して「絵で食べていく」生活がスタートする。「僕は贅沢がしたいわけではなく自分のやりたいことで食べていきたい」とシンプルな思いを語る。「個展を重ねていくうちに、関わる人に対して大切にしていることは『きちんとお金を払う』こと。手伝いたい、関わりたいという”誰かのやりがい”に頼っていては、結局搾取につながるから継続するのが困難になる。だから画家として生活するために簿記の資格がとても役に立っている。画家に限らずどんな仕事にも応用が効くところがまたいい」と続けた。
彼の作品作りのコンセプトである両価的感情とは「一つの事柄に介在する相反する感情」のこと。例えば「アートとお金」は、相反しているように見えて実は両方備えていなければ成立しないもの。物事を捉えるときには常に異なる視点で本質を掘りげていく。「好きなことをして食べていく」ことを実現するために、畑違いと思われる簿記やマーケティングを学ぼうとした「気づき」と諦めずに絵を「描き続けたこと」が、彼の意図する「画家として食べていく」生活へとつながったのだろう。
仕事の割合は年に1〜2回開く個展での収入が7割。テーマを決めてそれに向かって描き出したり、描き溜めた作品の中から絞り込んでテーマを決めて開催している。
基本的に12時から20時の間は自身の作品の構想を練ったり、実際に描いたりと作品作りにあてている。
現在使用している仕事の相棒とも言える画材たち。これまでに油絵や水彩画もやってきたが、今はアクリルガッシュが一番自分に合っていると感じているそうだ。
Profile
HAYATO MACHIDAさん
画家
1995年生まれ。沖縄県北谷町出身。大学入学後アート留学でNYへ渡り本格的にアートを始める。主にアクリル絵画を制作。現役大学生時に沖縄県立美術館(県民ギャラリー)初個展。「ターナーアワード2018」未来賞受賞。アディダスジャパンのイベントロゴを制作。2019年、音楽アーティストの沖縄公演ウェルカムボードの担当。2020年イーアス沖縄豊崎壁画参加、福岡博多阪急作品展開催。2021年オレンジレンジ公式グッズ参加、HYツアーグッズ担当。ユニクロコラボUT発売(沖縄ライカム店限定)。主に美術館、アートギャラリーでの個展を開催。日常の両価的感情をテーマに作品を作り続ける。
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