野球だけではなく、いろんな事を謙虚な気持ちで受け止める。
Interview
2009年4月より亜細亜大学で学生生活が始まった東浜巨くん。大きな夢と希望を持って東京に進学した東浜くんの将来の夢は、“プロ野球選手”になること。そのために、日々の長時間練習、一戦一戦の試合…などを積んでいくなかで未来と真剣に向き合い、夢実現のステップを駆け上がっています。東浜くんの過去、現在、未来を見つめ、夢を実現するためには何が必要かを聞いてみました。
文武両立で培われた強い精神力
小学校から野球を始め、名門沖縄尚学高校では1年生のときからエースとして活躍。3年生の春の選抜甲子園大会で見事全国制覇を果たした東浜くん。これだけの活躍をしているのだから野球漬けの毎日と思いきや、勉強との両立を図り成績を落としたことはないという。「勉強もがんばることが野球にもいい影響を与える」と指導してくれた監督の教えを守り、大学に進学した今も文武両立の精神で努力しているという。爽やかで甘いマスクとは対照的にマウンドに立ったときの冷静な判断やピンチを乗り切る精神力は、こうした強い意志から生まれてきたものなのだろうと感心させられる。
野球少年なら誰もが憧れる夢の舞台甲子園。その最高の舞台での優勝は、東浜くんにとっても大きな喜びだったのはもちろんだろうが、「甲子園を経験したことで、もっともっと野球を知りたい気持ちになった」という。甲子園選抜優勝した後の夏の県大会決勝、好敵手の浦添商業高校、伊波翔悟くんとの投げ合いの末破れ、沖縄県勢初の春夏連覇を狙っていた甲子園の切符を逃した試合。涙をためながらも爽やかな笑顔で伊波投手と握手していたシーンが想い出される。もちろん悔しい想いもあったのだろうが、東浜くんはすでにその頃から次の舞台へのステップを歩み始めていたのかもしれない。
野球だけではなく、いろんな事を謙虚な気持ちで受け止める
高校卒業後は、亜細亜大学に進学。入学早々、さっそく大輪の花を咲かせた。春の東都リーグで5試合に登板し4勝1敗、内4試合連続完投。最多勝・最優秀防御率・新人賞を獲得し、なんと44年ぶりの1年生ベストナイン投手に輝いた。高校時代から寮生活をしていたとはいえ、「初めての県外生活、沖縄とは違う生活リズム、交通や環境の違いに最初は戸惑いはありました」と本人も話しているように、大変な苦労があったと思われる。ベストナインに選出され整列を終えると涙が止まらなくなった(日刊スポーツ)らしく、万感の想いがあったのだろう。夢実現インタビューでは「もう東京の生活にも慣れましたよ」とケロッと答えてくれるところが東浜くんらしい。
そんな東浜くんも、県外に進学するにあたってはご両親との意見の違いもあったようだ。「実は最初、県外へ出ることを賛成していなかったんです。県内でいいんじゃないかって…。でも自分としては最終的にプロ野球選手を目指しているから、そのためにはどうしても県外で実践を積みたかったので、亜細亜大学の人の話も聞いてもらい説得しました」。高校の頃から寮生活で親元を離れて生活しているが、東京に来てからは、改めて両親への感謝の気持ちが強まっているという。「野球と勉強でアルバイトはできないので、生活費は仕送りしてもらっています。いつも見えないところで自分を支えてくれているんだなぁと感謝しています」。最近では、試合後は必ず結果を報告するようにしているらしく、「報告はメールが多いですけど…。お父さんは忙しいと思うので、お母さんに報告しています」と、少し照れながら話してくれた。
東浜くんは現在、亜細亜大学の野球部寮で各学年から1人ずつ集まった4人部屋で寮生活をしている。授業のある日以外は毎日朝から晩まで厳しい練習に取り組んでいる。「毎日くたくたになって帰ってから掃除や洗濯など、いろいろやることもたくさんあるので大変だけど、寮には毎日練習をともにしている仲間や先輩がいるので、野球だけではなくいろいろ学べることがあって、寮生活だからこそ経験できることも多いです。自分にはとてもプラスになっています」という。もちろん、中学時代から続けている文武両立の精神は健在で、両親への感謝を込めて報告するためにも、どちらも自分が納得いく成績を残せるようにがんばっているという。東浜くんにとって亜細亜大学は? との問いに「大きな夢を叶える特別な場所であると同時に、人間的にも成長できる素晴らしい大学です」と答えてくれた。夢へのステップを確実にクリアしながらも、それにおごることなく謙虚な気持ちで向き合っている姿勢は、19歳とは思えないほどしっかりしている。しかも、彼がこれまで登ってきた階段はひとつひとつがとてつもなく高く、人には言えない苦労の連続だったに違いない。感動はあるものの過ぎたことには執着せず、常にピュアな気持ちであらゆるものを吸収する前向きな姿勢は、この先にしっかりと見据えている夢の大きさを物語っている。同じ“うちなんちゅ”として今後の活躍に胸躍る気持ちだ。
人間的な成長が、夢実現を達成する
その後、日米大学野球選手権大会、アジア野球選手権大会ともに1年生ながら代表入りを果たし活躍した東浜くん。日米野球選手権大会では第1戦と第4戦に登板した。さらに、11月には日本プロ野球セ・パ両リーグ誕生60周年を記念して行われる「プロ選抜チーム」対「大学日本代表チーム」、史上初の交流選にも代表として選出された。夢にまで見たプロと同じグランドに立てる! 「自分はおまけで登録されているだけなんで…」と東浜くんらしい控えめなコメントだが、興奮しないわけがない! しかし本人はこれで有頂天になって天狗にならないよう、しっかりと自分自身を見つめているのだろう。「これまでの自分を評価してもらえた結果だと思うので、正直うれしい気持ちはありますが、まだ1年生なので、ここでもしっかり経験を積んでいきたいと思っています」と答えてくれた。交流戦での活躍に期待したい。
最後に、プロ野球選手を目指すにあたり今後の課題を聞いてみた。「いちばんは練習です。もっと練習をしないと…って思っています。しっかりと体力をつけて体をつくり、技術を磨き、精神的な強さを備えたい。一戦一戦に全力を注ぎ、たくさんの経験を積んで、人間的にも成長してければ必ず良い方向(夢実現)へ向かうと思うので…」。クレバーな東浜くんらしいコメントだが、心の奥底に秘めた熱い想いを感じた。もちろん最終目標はプロのグランドに立つことだと思うが、近い将来プロで活躍し始めた時点で、次なる大きな夢を抱くのだろうと期待が膨らむ。限りなき夢をしっかりと歩み続けている東浜くんをhands-GO TO SCHOOL!! 編集部も注目し続け、応援していきたい。
東浜巨から沖縄の高校生へメッセージ
自分の人生なんだから、自分がやりたいと思うことを続ければいいと思います。そのなかでの成功や失敗、喜びや悔しさ、継続することの辛さや苦労、さらに人との出会いや教えまでもが、“全部自分のためになるんだ”と思えば、毎日が楽しく過ごせると思います。がんばってください。
Profile
東浜 巨 Nao Higashihama
沖縄尚学高等学校出身。亜細亜大学経営学部経営学科。
「最初は東京への進学を反対されたけど、自分の気持ちを伝えて亜細亜大学への入学を許してもらいました。
野球と勉強を両立させて、自分の納得できるいい結果を残していきたいと思っています。」
GO TO SCHOOL 2009.10